ブーレ ホ短調 BWV996
J.S.バッハ / Arr. Riku Fujita
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楽譜
収録されている楽譜集
J.S.バッハ名曲集 Vol.1
J.S.バッハの名曲の中から10曲を選び、クラシックギター独奏用に編曲した曲集です。
楽譜は「五線譜+TAB譜」と「五線譜のみ」の2種類を収録しており、TAB譜を使って演奏したい方にも、普段は五線譜だけで演奏する方にも対応しています。
五線譜には左手の指番号やセーハ記号などを丁寧に記載し、クラシックギターの一般的な記譜に沿った、五線譜だけでも読みやすい楽譜を目指しています。
購入先
この曲について
「リュート組曲第1番」と呼ばれるBWV 996
《ブーレ ホ短調 BWV 996》は、J.S.バッハの《組曲 ホ短調 BWV 996》の第5曲にあたります。
この組曲は現在、しばしば《リュート組曲第1番》と呼ばれています。ただし、この名称や「第1番」という番号をバッハ自身が付けたわけではありません。
20世紀にリュート奏者・研究者のハンス・ダゴベルト・ブルーガー(Hans Dagobert Bruger, 1894–1932)がバッハのいわゆるリュート作品をまとめて校訂・出版し、その中で用いた番号付けが広く定着したものです。
BWV 996は、プレリュード、アルマンド、クーラント、サラバンド、ブーレ、ジーグの6曲から構成されています。バロック時代の組曲らしく、それぞれ性格の異なる舞曲をひとつの作品としてまとめた構成になっています。
本当に「リュートのための曲」だったのか?
BWV 996は長く「リュート組曲」として親しまれてきましたが、実はバッハが通常のリュートのために作曲したと断定できる作品ではありません。
現存する写譜のひとつには、aufs Lauten Werckという記載があります。これは一般的なリュートではなく、リュートに似た柔らかな響きを持つ鍵盤楽器「ラウテンヴェルク(リュート・チェンバロ)」を意味すると考えられており、現在ではBWV 996がこの楽器のために書かれた可能性も指摘されています。
一方で、その音楽は撥弦楽器との相性も非常によく、現在ではリュートだけでなくクラシックギターのレパートリーとしても広く定着しています。
組曲の中でも特に有名な《ブーレ》
6つの楽章の中でも、特に単独で演奏される機会が多いのが第5曲の《ブーレ》です。
ブーレはフランスに由来する舞曲で、一般に2拍子系の軽快なリズムを持ち、弱拍から始まることを特徴とします。この曲も短いアウフタクトから勢いよく始まり、大きく前半と後半に分かれる二部形式で書かれています。
非常にコンパクトな作品ですが、バッハらしい対位法的な書法が凝縮されており、現在ではクラシックギターで演奏されるバッハ作品の中でも特に親しまれている一曲となっています。
「メロディ+伴奏」ではない二声の音楽
このブーレの大きな特徴が、二つの声部がそれぞれ独立した旋律を持ちながら同時に進んでいくことです。
一般的な「上の音がメロディ、下の音が伴奏」という関係とは少し異なり、高音側の声部も低音側の声部も、それぞれが旋律として意味を持っています。
一方の声部が上昇するともう一方が下降したり、一方のフレーズをもう一方が受け取るように動いたりと、二つの旋律が会話をしながらひとつの音楽を作っていくのがこの作品の面白さです。
ギターではこの二つの声部を1人で同時に演奏することになるため、単にすべての音を正確に弾くだけでなく、それぞれのラインを独立して聞かせることが重要になります。
このクラシックギター・アレンジについて
このクラシックギター版では、原曲の二声の動きや曲の構成を基本的にそのまま活かした、オーソドックスなアレンジとしています。
ギターで自然に演奏できるよう運指を整えながらも、上声と低声がそれぞれ独立して動く、バッハらしい対位法的な特徴をできるだけそのまま感じられる構成としています。
ワンポイント解説
まずは二つの声部を別々に弾いてみる
この曲を練習するときに最初に意識したいのが、上声と低声のそれぞれがどのような旋律になっているのかを把握することです。
最初から二声を同時に弾こうとすると、どうしても「楽譜に書いてある音を全部押さえる」という意識になりやすく、それぞれの旋律の流れが分かりにくくなります。
そこで、まずは上声だけを取り出して最初から最後まで弾く、次に低声だけを取り出して弾くという練習をしてみてください。
それぞれを単独で弾いてみると、低音側も単なる伴奏ではなく、ひとつの旋律として自然な流れを持っていることが分かりやすくなります。
二つのラインをそれぞれ理解したうえで、最後にそれらを組み合わせるようなイメージで練習すると、二声の動きを整理しやすくなります。
二つの旋律を同時に「歌わせる」
二声を組み合わせたあとも、どちらか一方だけをメロディ、もう一方を単なる伴奏として扱わないことが大切です。
上声にもフレーズがあり、低声にもフレーズがあるという意識を持って演奏してみてください。
必ずしも両方をまったく同じ音量で弾く必要はありませんが、一方の声部が極端に埋もれてしまうと、この曲が持つ対位法的な面白さが伝わりにくくなります。
頭の中で二人の奏者が別々の旋律を演奏しているようにイメージすると、それぞれの声部を独立させやすくなります。
後半は特に、ゆっくりしたテンポから
曲は大きく前半と後半に分かれており、前半は押弦や右手の動きも比較的取り組みやすいと思います。
一方、後半に入ると二声の組み合わせや左手の動きが少し複雑になり、テンポを上げるほどミスが出やすくなります。
最初から完成テンポで弾こうとせず、まずは二つの声部を確実にコントロールできるゆっくりしたテンポから始めてください。
そのテンポで指が自然に動くようになったら、少しずつ速度を上げていきます。
速さよりも、二声がきれいに聞こえることを優先する
ブーレは軽快な舞曲なので、ある程度テンポを上げると非常に生き生きとした演奏になります。
ただし、速く弾くことそのものが目的ではありません。
テンポを上げた結果、音が途切れたり、二つの旋律が混ざって聞こえたり、押弦が雑になったりするのであれば、少しテンポを落としてでも明瞭に演奏する方が音楽的には効果的です。
この曲は比較的ゆったりしたテンポでも十分に成立します。
自分が二つの声部をきれいにコントロールできるテンポを基準にし、そこから無理のない範囲で少しずつテンポを上げていくことをおすすめします。
曲の基本情報
- 作曲者
- J.S.バッハ
- 編曲者
- Riku Fujita
- 難易度
- Level-3 ★★★☆☆
- チューニング
- Regular Tuning
