主よ、人の望みよ喜びよ
J.S.バッハ / Arr. Riku Fujita
動画
演奏+TAB付きスロー練習
楽譜
収録されている楽譜集
J.S.バッハ名曲集 Vol.1
J.S.バッハの名曲の中から10曲を選び、クラシックギター独奏用に編曲した曲集です。
楽譜は「五線譜+TAB譜」と「五線譜のみ」の2種類を収録しており、TAB譜を使って演奏したい方にも、普段は五線譜だけで演奏する方にも対応しています。
五線譜には左手の指番号やセーハ記号などを丁寧に記載し、クラシックギターの一般的な記譜に沿った、五線譜だけでも読みやすい楽譜を目指しています。
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クラシック名曲集 Vol.1
時代を超えて親しまれてきたクラシックの名曲13曲を、クラシックギター独奏用にアレンジした楽譜集です。
親しみやすい小品から弾きごたえのある作品まで、幅広いレベルのレパートリーを収録しています。
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この曲について
もともとは教会カンタータの中の一曲
《主よ、人の望みよ喜びよ》は、J.S.バッハのカンタータ第147番《心と口と行いと生活で》BWV 147の中に登場するコラールです。
現在ではこの部分だけが独立して演奏されることも多く、ピアノ、オルガン、ギターをはじめ、さまざまな楽器のために編曲されています。そのため一つの独立した小品のように親しまれていますが、もともとは歌詞を伴う宗教作品の一部分として書かれた音楽です。
BWV 147のもとになった作品は、バッハがヴァイマルで活動していた1716年に作曲されました。その後、1723年にライプツィヒの聖トーマス教会のカントルに就任したバッハが作品を大きく改作し、現在知られている全10曲のカンタータへと発展させています。
この完成版は、1723年7月2日の「マリアの訪問」の祝日のために演奏されました。
同じ音楽がカンタータの中で二度登場する
興味深いことに、現在《主よ、人の望みよ喜びよ》として親しまれている音楽は、BWV 147の中でほぼ同じ形で二度登場します。
カンタータは大きく二つの部分に分かれており、第1部の最後となる第6曲ではWohl mir, daß ich Jesum habe、そして作品全体を締めくくる第10曲ではJesus bleibet meine Freudeという別の歌詞が歌われます。
旋律と特徴的な伴奏はほぼ共通していますが、それぞれ異なる歌詞によって二つの大きな部分を締めくくる役割を担っています。
現在ではカンタータ全体よりもこのコラールだけが非常に有名になっており、バッハの宗教作品の中でも特に広く親しまれている旋律のひとつとなっています。
有名な旋律はバッハ以前から存在していた
さらに、この曲の中心となるコラール旋律そのものは、実はバッハがゼロから作曲したものではありません。
もとになっているのは、17世紀のドイツの作曲家・ヴァイオリニストヨハン・ショップによるWerde munter, mein Gemüteというコラール旋律で、1642年に出版されています。
バッハはこの既存の旋律を用いながら、その周囲に絶え間なく流れる三連符の伴奏と豊かな和声を組み合わせました。
ゆったりと進むコラールの旋律と、その周囲を流れるように動き続ける伴奏。この二つの異なる時間の流れが重なることで、静かでありながら途切れることなく前へ進んでいく、この曲独特の響きが生まれています。
独立した名曲として世界中へ
このコラールは20世紀に入ると、カンタータから切り離された独立した作品としても広く演奏されるようになりました。
英語圏ではJesu, Joy of Man’s Desiringという名前で知られ、特にピアノやオルガンなどへの編曲を通じて急速に知名度を高めていきます。
1926年にはイギリスのピアニスト、マイラ・ヘスによるピアノ編曲も出版され、現在でも代表的なバッハ編曲のひとつとして演奏されています。
今日では宗教音楽という本来の枠を越え、結婚式やコンサートなどでも親しまれる、バッハを代表する名曲のひとつとなっています。
このクラシックギター・アレンジについて
このクラシックギター・アレンジでは、原曲の和声や曲の進行をできる限り踏襲し、ギター1本で自然に演奏できる形にまとめています。
旋律だけを取り出して大きく作り変えるのではなく、主題を支える低音や内声の動きも可能な範囲で取り入れ、原曲が持つ声部の重なりや流れを感じられる、比較的オーソドックスなアレンジとしています。
特に、穏やかな主題の周囲で伴奏が絶えず動き続ける原曲の特徴を活かしながら、クラシックギターならではの響きで作品全体を楽しめる構成を目指しています。
ワンポイント解説
同じ主題でも、ベースの動きに注目する
冒頭に登場する有名な主題は、曲中で何度か繰り返されます。
一見すると同じフレーズの繰り返しに見えますが、その下で鳴っているベースや内声のパターンは少しずつ変化しています。
メロディを覚えてしまうと上声だけを見て演奏してしまいがちですが、主題が再び現れたときに「前とまったく同じ」と考えず、低音がどのように変化しているかを確認しながら練習してみてください。
4分音符のベースを途切れさせない
低音部分そのものは、基本的には4分音符が淡々と続いていく比較的シンプルなものです。
ただし、この一定の4分音符の動きが曲全体を前へ進ませる大切な役割を持っています。
次の音を押さえる準備を急ぐあまり、前のベース音から早く指を離してしまうと、低音と低音の間に不自然な空白ができ、曲の流れが途切れて聞こえてしまいます。
ひとつの4分音符を可能な限り本来の音価まで保ち、そこから次のベース音へ滑らかにつなげることを意識してください。
もちろん、次の押弦が遅れてしまうほど無理に音を残す必要はありません。ベースが一定の歩みを止めることなく流れ続けているように聞かせることがポイントです。
常に「どの声部がメロディなのか」を意識する
曲の前半では主旋律の位置が比較的分かりやすいのですが、後半に進むにつれて少しずつ声部の関係が複雑になります。
主題の形そのものが変化したり、それまで高音側にあった重要な旋律が別の声部へ移ったりします。
特に36小節目からのフレーズでは、メロディが低音側へ移るため、それまでと同じ感覚で高音だけを強調してしまうと、本来聞かせたい旋律が伴奏の中に埋もれてしまいます。
こうした部分では、楽譜を単純に「高い音と低い音の集まり」として見るのではなく、今どの音がメロディで、どの音が伴奏なのかを整理してから演奏することが大切です。
メロディが移動したら、音のバランスも一緒に変える
メロディが高音から低音へ移った場合は、右手の音量バランスもそれに合わせて変える必要があります。
低音側にメロディがあるときには、その音を少し前へ出し、高音側の音は伴奏として控えめにします。
逆に主旋律が再び高音側へ戻れば、今度は高音を自然に浮き立たせます。
メロディが曲の中を声部から声部へ受け渡されていく感覚を持って演奏すると、このアレンジの立体感がよりはっきりと聞こえるようになります。
曲の基本情報
- 作曲者
- J.S.バッハ
- 編曲者
- Riku Fujita
- 難易度
- Level-3 ★★★☆☆
- チューニング
- Regular Tuning
