別れの曲(エチュードOp.10, No.3)

F.ショパン / Arr. Riku Fujita

Level-2 ★★☆☆☆

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楽譜

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収録されている楽譜集

この曲について

「練習曲」の枠を越えたショパンの名旋律

日本では《別れの曲》の名前で広く親しまれているこの作品は、フレデリック・ショパンの《エチュード ホ長調 Op.10-3》です。

「エチュード(Étude)」とは本来、特定の演奏技術を身につけるための「練習曲」を意味します。しかし、ショパンのエチュードは単なる指の訓練にとどまらず、高度な演奏技術と豊かな音楽表現をひとつの作品の中で結びつけたことで、ピアノ音楽の歴史に大きな影響を与えました。

その中でもOp.10-3は、とりわけ歌うような美しい旋律で知られています。穏やかな伴奏の上で長く伸びていく主旋律は、ピアノという楽器でありながら、人の声で歌っているかのような性格を持っています。

ショパン自身もこの旋律を非常に気に入っていたようで、弟子アドルフ・グートマンの証言をもとにした後世の伝記では、これほど美しい旋律を他に書いたことがない、という趣旨の言葉を語ったと伝えられています。

1830年代、若きショパンが生み出した《12のエチュード》

この曲は1832年に作曲され、1833年に《12のエチュード Op.10》の第3曲として出版されました。

当時のショパンは20代前半。故郷ポーランドを離れ、ヨーロッパを経てパリへと活動の拠点を移した時期にあたります。Op.10のエチュード群は、こうした若きショパンが独自のピアノ語法を確立していく時期に生まれた重要な作品で、曲集全体は同時代を代表するピアニストであったフランツ・リストに献呈されています。

Op.10-3の原曲は大きく見ると、穏やかで叙情的な主題、それとは対照的な激しい中間部、そして再び冒頭の主題へ戻る構成になっています。

有名な冒頭だけを聴くと非常に穏やかな曲に思えますが、原曲の中間部には半音階的な動きや複雑な重音が連続する、エチュードらしい非常に技巧的な部分が登場します。美しい旋律を歌わせる技術と、高度な指のコントロールの両方を求められる作品です。

実は「別れの曲」はショパンが付けた題名ではない

日本ではすっかり《別れの曲》という名前が定着していますが、これはショパン自身が付けたタイトルではありません。

作品そのものはあくまで《エチュード ホ長調 Op.10-3》であり、海外では後にTristesse(悲しみ)やL’Adieu(別れ)といった愛称で呼ばれることもありますが、これらもショパン自身による標題ではありません。

日本で《別れの曲》という名前が広まった大きなきっかけは、1930年代に制作されたショパンの伝記映画です。1934年の映画Abschiedswalzerが1935年に日本で《別れの曲》という邦題で公開され、劇中でOp.10-3が印象的に使われました。

映画のヒットとともに、その邦題がいつしか作品そのものの愛称として日本に定着しました。

現在では、ショパンの作品であることや正式な作品番号を知らなくても、その旋律を耳にしたことがある人は多く、ショパンを代表する叙情的な名曲のひとつとして広く親しまれています。

このクラシックギター・アレンジについて

原曲はホ長調ですが、このクラシックギター・アレンジではハ長調へ移調し、できるだけ優しく演奏できる形にまとめています。

また、原曲全体をそのままギターへ移すのではなく、特に有名な主題を中心とした構成としています。

原曲に登場する技巧的な中間部などは省略し、《別れの曲》を象徴する美しい旋律を手軽に楽しめるアレンジとしました。

そのため原曲の演奏難易度とは大きく異なり、ショパンの有名なテーマをクラシックギターで気軽に演奏してみたい方にも取り組みやすい内容になっています。

ワンポイント解説

難しさよりも「きれいに弾くこと」を大切に

このアレンジでは原曲の技巧的な中間部を省き、ハ長調で弾きやすくまとめているため、技術的に特別難しい箇所はほとんどありません。

その一方で、《別れの曲》の魅力は何といっても美しく歌う主旋律にあります。

速く弾いたり難しいテクニックを見せたりする曲ではないからこそ、一つひとつの音がきれいに鳴っているか、旋律が自然につながっているかといった細かな部分がそのまま演奏の印象につながります。

まずはすべての音を明瞭に、雑音なく発音することを最優先にして練習してみてください。

ハイポジションでは押弦をいつも以上に丁寧に

このアレンジで少し注意したいのが、途中に登場するハイポジションで演奏する部分です。

ポジションが高くなると左手の形が変化するため、メロディに意識を取られているうちに、伴奏側の押弦が甘くなることがあります。

弦を十分に押さえられていないと音がビビったり、輪郭のぼやけた音になったりして、せっかくの穏やかな雰囲気が崩れてしまいます。

特に和音を押さえる場面では、メロディだけでなく伴奏を構成するすべての音がきれいに発音しているかを、一度ゆっくり確認してみてください。

一音ずつ確認してから、旋律としてつなげる

うまく音が鳴らない箇所があれば、最初からフレーズ全体を繰り返すのではなく、まず和音や押弦をひとつずつ止まりながら確認するのがおすすめです。

すべての音が明瞭に鳴る左手の形を確認したうえで、そこから少しずつ音と音をつなげていきます。

この曲では、難しいことをする必要はありません。むしろ一つひとつの音を丁寧に発音し、そのきれいな音を自然な旋律としてつないでいくことが、最も大切なポイントです。

曲の基本情報

作曲者
F.ショパン
編曲者
Riku Fujita
難易度
Level-2 ★★☆☆☆
チューニング
Regular Tuning
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