G線上のアリア
J.S.バッハ / Arr. RIku Fujita
動画
演奏+TAB付きスロー練習
楽譜
収録されている楽譜集
J.S.バッハ名曲集 Vol.1
J.S.バッハの名曲の中から10曲を選び、クラシックギター独奏用に編曲した曲集です。
楽譜は「五線譜+TAB譜」と「五線譜のみ」の2種類を収録しており、TAB譜を使って演奏したい方にも、普段は五線譜だけで演奏する方にも対応しています。
五線譜には左手の指番号やセーハ記号などを丁寧に記載し、クラシックギターの一般的な記譜に沿った、五線譜だけでも読みやすい楽譜を目指しています。
購入先
この曲について
バッハを代表する、静かで美しい名曲
《G線上のアリア》は、J.S.バッハの作品の中でも特に広く親しまれている楽曲のひとつです。
ゆったりと流れる優雅な旋律と、穏やかでありながら豊かな和声。クラシック音楽に詳しくなくても、どこかで一度は耳にしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。現在ではオーケストラや弦楽合奏だけでなく、ピアノ、ヴァイオリン、ギターなどさまざまな編成にアレンジされ、バッハのみならずバロック音楽を代表する名曲のひとつとして広く演奏されています。
原曲は、1730年ごろに成立したと考えられている《管弦楽組曲第3番 ニ長調 BWV 1068》の第2曲「Air」です。この組曲全体ではトランペット、ティンパニ、オーボエ、弦楽器、通奏低音が用いられますが、「Air」では華やかな管楽器や打楽器は休み、弦楽器と通奏低音だけで演奏されます。そのため、前後の楽章とは対照的な、静かで親密な響きが生まれています。
なぜ「G線上のアリア」と呼ばれるのか?
実は、バッハ自身がこの曲を《G線上のアリア》と名付けたわけではありません。
バッハの原曲での名称は、シンプルに 「Air(エール)」。歌うような性格を持つ器楽曲を表す言葉で、日本では一般に「アリア」と訳され、この曲も《G線上のアリア》として知られるようになりました。
現在の名前が生まれたのは、バッハの時代からずっと後の1871年です。
ドイツのヴァイオリニスト、アウグスト・ヴィルヘルミ(August Wilhelmj)がこの「Air」をヴァイオリン独奏用に編曲しました。その際、原曲のニ長調をハ長調へ移調し、主旋律を低い音域へ移すことで、ヴァイオリンの4本の弦のうち、もっとも低いG線だけで旋律全体を演奏できるようにしたのです。
このヴィルヘルミ版が「G線上で演奏するAir」として知られるようになり、やがて《Air on the G String》《G線上のアリア》という呼び名が、バッハの原曲そのものにも広く使われるようになりました。
つまり、「G線上」という言葉はバッハの作曲時からあったものではなく、19世紀に生まれた編曲に由来する名前なのです。
主旋律だけではない、声部の美しい掛け合い
この曲というと、まず耳に残るのは第1ヴァイオリンが奏でるゆったりとした主旋律です。しかし、《Air》の美しさは主旋律だけで作られているわけではありません。
その下では第2ヴァイオリンやヴィオラ、低音声部がそれぞれ独立して動き、主旋律に寄り添ったり、ときには応答するような旋律を奏でたりしています。
バッハらしく、複数の声部が同時に動きながらひとつの音楽を作り上げており、ときには音同士が一瞬ぶつかる「不協和」が生まれ、それが次の響きへ解決することで独特の美しさを生み出します。また、低音もほとんど休むことなく動き続けているため、非常にゆっくりした曲でありながら、音楽そのものは絶えず前へ進み続けています。
一見するとシンプルで穏やかな作品ですが、主旋律、対旋律、低音がそれぞれ歌いながら絡み合うことが、この曲の大きな魅力です。
このクラシックギター・アレンジについて
このクラシックギター・アレンジでは、原曲の進行や各声部の動きをできる限り踏襲しながら、1本のギターで演奏できる形にまとめています。
原曲の「Air」は大きく前半と後半に分かれる二部形式で書かれており、原典では前半部分に反復があります。このアレンジではその繰り返しを省略していますが、各部分そのものを短縮したり途中を抜粋したりしているわけではありません。
そのため、反復を行わずストレートに原曲を演奏した場合と同じ流れで、曲の最初から最後までを楽しめるフルサイズのクラシックギター・アレンジとなっています。
主旋律だけでなく、原曲で聞こえてくる対旋律や低音の動きも可能な範囲で取り入れ、複数の声部が掛け合う《Air》ならではの響きをギター1本で表現することを目指しています。
ワンポイント解説
音を弾くこと自体は比較的取り組みやすい曲
《G線上のアリア》はテンポが非常にゆっくりしているため、音符を追って演奏するという意味では、全体的な難易度は比較的低めです。
速いパッセージが連続するような曲ではないので、ひとつずつ押さえる場所を確認しながら練習すれば、比較的取り組みやすい作品だと思います。
ただし、「弾けること」と「美しく聞かせること」の差が非常に大きい曲でもあります。
音を最後まで保ち、滑らかにつなげる
ゆっくりした曲では、一つひとつの音が長く耳に残ります。そのため、速い曲ではあまり気にならないような小さなミスや、音のつながりの粗さも目立ちやすくなります。
特に注意したいのが、本来伸ばすべき音を途中で切らないことです。
次のポジションへ移る準備を急いで左手を早く離してしまうと、音と音の間に不必要な隙間ができ、せっかくの滑らかな旋律がぶつぶつと途切れて聞こえてしまいます。
一方で、前の音を残すことだけに集中しすぎて次の押弦が遅れれば、次の音の発音が雑になってしまいます。
前の音をできるだけ本来の音価まで響かせながら、次の音へきれいに移る。
このバランスを常に意識してみてください。テンポの遅い曲だからこそ、一音一音の発音と消え際まで丁寧にコントロールすることが大切です。
主旋律と「対旋律」を別々の声として考える
そして、この曲を美しく聞かせるうえで特に大切なのが、主旋律と対旋律の掛け合いです。
途中から、主旋律の合間に別の声部が応答するような動きが多く登場します。
ここで気をつけたいのは、対旋律を単純に「主旋律の続き」として弾かないことです。
たとえば、
主旋律 → 対旋律 → 主旋律
と音が続いていたとしても、それを一本の長い旋律として考えるのではなく、
「主旋律を歌う声」と「それに応える別の声」
というように、頭の中で二つのパートを分けて考えてみてください。
主旋律が問いかけ、それに別の声部が応答し、再び主旋律へ戻る――そのような二つの声の会話として捉えると、この曲ならではの立体感が出てきます。
音量や音色にも少し差をつけ、主旋律と対旋律の存在がそれぞれ聞き取れるようにすると、単にメロディーをきれいに弾くだけではない、バッハらしい声部の掛け合いを表現しやすくなります。
曲の基本情報
- 作曲者
- J.S.バッハ
- 編曲者
- RIku Fujita
- 難易度
- Level-2 ★★☆☆☆
- チューニング
- レギュラーチューニング
