パッヘルベルのカノン
J.パッヘルベル / Arr. Riku Fujita
動画
演奏+TAB付きスロー練習
楽譜
収録されている楽譜集
クラシック名曲集 Vol.1
時代を超えて親しまれてきたクラシックの名曲13曲を、クラシックギター独奏用にアレンジした楽譜集です。
親しみやすい小品から弾きごたえのある作品まで、幅広いレベルのレパートリーを収録しています。
購入先
この曲について
誰もが一度は耳にした、バロック音楽の名曲
パッヘルベルの《カノン》は、クラシック音楽の中でも特に広く親しまれている作品のひとつです。
ゆったりと繰り返される低音の上に、次々と旋律が重なっていく穏やかな響きは、クラシックに詳しくなくても一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。現在ではコンサートだけでなく、結婚式や映画、テレビ、広告などさまざまな場面で使われ、数多くの楽器編成にもアレンジされています。
ところが、この作品が現在のような世界的な人気を獲得したのは比較的新しい時代のことです。長い間ほとんど忘れられていた作品でしたが、20世紀に楽譜が出版され、特に1960年代末から1970年代にかけて録音を通じて広く知られるようになりました。現在の圧倒的な知名度から考えると、意外に新しい「復活」を遂げたクラシック作品でもあります。
「カノン」とは曲名ではなく、音楽の仕組み
一般には《パッヘルベルのカノン》、あるいは単に《カノン》と呼ばれていますが、「カノン(Canon)」という言葉は、もともと特定の曲だけを指す固有名詞ではありません。
カノンとは、一つの旋律を別の声部が少し遅れて追いかけるように演奏していく作曲技法です。身近なものに置き換えるなら、同じ歌を時間差で歌い始める**「輪唱」に近い仕組み**と考えると分かりやすいでしょう。
パッヘルベルの作品では、3本のヴァイオリンが同じ旋律を時間差で追いかけながら、低音では同じパターンが繰り返され続けます。非常に規則的な仕組みで作られているにもかかわらず、音楽は少しずつ動きを増しながら豊かに変化していきます。
なお、現在一般に《カノン》として親しまれている曲は、本来**《3本のヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調》**という作品の前半にあたります。後半には「ジーグ」と呼ばれる快活な舞曲が続きますが、現在ではカノンだけが単独で演奏されることが圧倒的に多くなっています。
パッヘルベルにとっても異例だった「カノン」
ヨハン・パッヘルベル(1653–1706)は、17世紀後半のドイツで活躍したバロック時代の作曲家・オルガニストです。
現在では《カノン》の作曲家として圧倒的に有名ですが、もともと彼が得意としていたのはオルガン曲やプロテスタント教会音楽であり、《カノン》のような室内楽作品はその膨大な作品群の中ではむしろ例外的な存在でした。
さらに興味深いことに、《カノン》はパッヘルベルが残した唯一のカノン作品と一般にされています。生涯に数多くの作品を書いた作曲家でありながら、後世で最も有名になった曲が、彼にとって決して中心的なジャンルではなかったというのも面白いところです。
正確な作曲年は分かっていませんが、17世紀後半の作品と考えられており、一般には1680年頃とされています。つまり、J.S.バッハが活躍するよりも一世代ほど前のドイツ・バロック音楽に属する作品です。
現代の音楽にも残る「カノン進行」
《カノン》が現代まで強い存在感を持ち続けている理由のひとつが、その非常に印象的な和声進行です。
原曲のニ長調では、
D → A → Bm → F♯m → G → D → G → A
という8つの和音を基本とする流れが繰り返されます。
これをローマ数字で表すと、
I → V → vi → iii → IV → I → IV → V
となり、現在ではこの並び、あるいはそこから派生した進行が**「カノン進行」「Pachelbel progression」**などと呼ばれるほど有名になっています。
同じ、あるいはよく似たコード進行はポップスやロックをはじめとする数多くの現代音楽にも登場します。もちろん、それらすべてが直接パッヘルベルから影響を受けたという意味ではありません。しかし、このコード進行だけを聞いて《カノン》を連想する人が多いことも研究で示されており、約300年前の作品の和声パターンが、現在でも一つの音楽的な「型」として認識されているのは非常に興味深いところです。
このクラシックギター・アレンジについて
原曲は3本のヴァイオリンと通奏低音によって演奏され、同じ低音パターンの上で3つのヴァイオリン声部が少しずつ変化していきます。
このクラシックギター・アレンジでは、原曲をそのまま縮小してギターに移すのではなく、原曲の中から特に印象的な旋律を選び、約3分で演奏できる形に再構成しています。
それぞれの旋律は可能な限り原曲の形を残しているため、コンパクトなアレンジながら、《カノン》を象徴するさまざまな旋律の変化を楽しむことができます。
楽譜上はハ長調で記譜しており、カポタストを2フレットに装着すると、原曲と同じニ長調で響きます。カポを使用せずに演奏する場合はハ長調となります。
ワンポイント解説
まずは「カノン進行」を意識してみる
このアレンジでは譜面上にコードネームを記載していませんが、曲全体の土台では、
C → G → Am → Em → F → C → F → G
というコード進行が繰り返されています。
これは原曲の「カノン進行」をハ長調に移したもので、2拍ごとにコードが変化し、4小節でひとつのサイクルになっています。
低音では、それぞれのコードのルート音を基本として2分音符で演奏しています。旋律だけを追うのではなく、「今どのコードの上で弾いているのか」を意識すると、曲全体の構造をつかみやすくなります。
低音を途中で切らず、曲の流れを保つ
演奏するときに特に大切なのが、2分音符で鳴らしている低音をできるだけ長く響かせることです。
次の音を押さえる準備を急ぐあまり左手を早く離してしまうと、低音が途中で途切れ、曲全体が細切れに聞こえやすくなります。
《カノン》では、同じ低音の流れが絶えず繰り返され、その上に旋律が重なっていくことが大きな特徴です。そのため、低音を可能な限り本来の音価まで保つことで、音楽が途切れることなく前へ流れ続けているように聞かせることができます。
もちろん、次の押弦が遅れてしまうほど無理に音を残す必要はありません。「できるだけ前の音を響かせながら、次の音へ滑らかにつなぐ」という意識で演奏してみてください。
4小節単位で自由に組み替えてもOK
このアレンジのもうひとつの特徴は、4小節ごとに同じコード進行が一巡する構造になっていることです。
そのため、それぞれの4小節のまとまりは比較的自由に入れ替えたり、省略したりすることができます。
原曲の中でも特に有名な、細かな音符が流れる中間部の旋律はぜひ演奏してほしいところですが、それ以外については、「この部分は少し難しい」「もう少し短く演奏したい」と感じるのであれば、4小節単位で丸ごと飛ばしても構いません。
逆に、気に入った部分をもう一度演奏することもできます。たとえば最後に有名な旋律をもう一度繰り返してから終わる、といった構成でも問題ありません。
《カノン》そのものが、一定の土台の上にさまざまな旋律を重ねていく音楽です。楽譜どおりに演奏することだけにこだわらず、自分の演奏時間や難易度に合わせて、好きな旋律を組み合わせて楽しんでみてください。
曲の基本情報
- 作曲者
- J.パッヘルベル
- 編曲者
- Riku Fujita
- 難易度
- Level-3 ★★★☆☆
- チューニング
- レギュラー
- カポ
- 2
